東京高等裁判所 昭和58年(ネ)884号 判決
当裁判所も、控訴人の被控訴人らに対する請求はいずれも理由がないものと判断するが、その理由は、次のとおり訂正及び付加する他は、原判決がその理由として説示するところと同一であるから、これを引用する。
(中島 塩谷 涌井)
〔編注〕当審判決で引用した原判決理由(この部分には当審の判決理由で付加・訂正したものはない。)は次のとおりである。
三1 原告主張の生命保険契約(以下「本件各保険契約」という。)が締結されていたこと、その保険契約者兼被保険者である山川勝彦及び死亡保険金受取人(以下「受取人」という。)に指定されていた山川タケが、昭和五六年一〇月一五日共に縊死し、その死亡時について民法三二条ノ二の同時死亡の推定規定の適用される状況にあったことは、当事者間に争いがない。
2 原告は、被告らは本件各保険契約に基づく死亡保険金請求権を相続により山川タケから承継取得した旨主張し、被告らは、これを原始取得した旨主張する。
そこで検討するに、本件各保険契約は、前項記載のとおりいずれも他人のためにする生命保険契約であり、山川タケは契約成立と同時に死亡保険金請求権を取得したが、≪証拠≫によれば、本件各保険契約はその約款により保険契約者(大同生命との保険契約については、その承継人も含む。)に受取人の指定・変更権が留保されていたことが認められ、したがって、山川タケの右権利は、同人及び山川勝彦の死亡前においては、未だ確定的ではなく、保険契約者が変更権を行使すれば消滅するに至るものである。ところで、受取人が死亡した後、保険事故発生以前に受取人の変更がなされていない場合における死亡保険金請求権の帰属については解釈上争いがあるが、≪証拠≫によれば、右各契約には、それぞれ別紙記載のような約款があることが認められるところ、右各約款は、保険金請求権の帰属とは関係なく、保険者の支払の便宜のため保険金の支払方法を定めたものというよりは、受取人死亡後その変更が行われない間に保険事故が発生した場合には、従前の受取人の相続人を保険金請求権の帰属者であるとみなし、受取人として取扱って、同人に保険金を支払うことを定めたものであり、受取人の指定と同一効力を生じさせることをその趣旨とするものと解される。したがって、右の場合における保険金請求権は、右約款による受取人の指定によって、受取人の相続人が原始的に取得するものというべきである。
3 また、本件のように、保険契約者兼被保険者が受取人と同時に死亡した事案においては、保険契約者やその承継人による受取人変更権行使の余地はないが、受取人が保険事故発生当時において生存していた場合、すなわち、その保険金請求権が確定した後死亡してその権利が相続される場合と異なることは、保険事故発生前に受取人が死亡した場合と同様であり、本件のような場合においても、前項記載の場合に準じて、本件各保険契約の約款により受取人の相続人が受取人とみなされ、右相続人に死亡保険金請求権が帰属するものと解される。
4 右のとおりであるから、被告らは原告主張の保険金請求権及びその受領権を原始取得したもので、それらは被告らの固有財産というべきであって、その余の点について判断するまでもなく、被告らに民法九二一条一号に該当する行為があったとはいいがたく、被告らは有効に相続放棄をしたものと認められる。
普通保険約款
大同生命(定期保険)
第二七条<4> 死亡保険金受取人が死亡した後、まだ変更されていない間は、その死亡した受取人の死亡時の法定相続人を死亡保険金受取人として取り扱います。
日本生命(利益配当付養老生命保険)
第一条6 死亡保険金が支払われる場合で、被保険者の死亡時に、死亡保険金受取人がすでに死亡しておりかつ死亡保険金受取人の死亡後に第二五条(保険金の受取人の変更)の規定により死亡保険金受取人の変更が行われていないときは、会社は、死亡保険金受取人の法定相続人を死亡保険金受取人とみなして、それぞれの法定相続分に応じて死亡保険金を支払います。